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名古屋地方裁判所 昭和43年(わ)156号 判決

本籍

名古屋市中村区東柳町一丁目二八番地

住居

岐阜県各務原市鵜沼町字大塚七六三〇番地の一五〇

会社社長

長沼竜

大正六年一月一二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官三浦尉七出席のうち、審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役拾月及び罰金六百万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金壱万円を一日に換算した期間労役場に留置する。

この裁判確定の日から参年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は当時名古屋市中村区東柳町一丁目二八番地に居住し昭和二九年一〇月ごろから神戸市生田区北長狭通りにパチンコ店「美久仁」を昭和三六年ごろから名古屋市中川区下之一色町古川にパチンコ店「マツヤセンター」を、昭和三九年ごろから同市中村区稲葉地本通りにパチンコ店錦会館(前に一富士会館と称していたものを改称)を、各設け個人名義で営業していた者であるが、その所得を他人名義に分散し、或は過少に所得を申告して所得税を免がれようと企て

第一、昭和三九年度における実際の総所得金額は、すくなくとも二六、三一〇、〇〇〇円、これに対する正規の所得税額は一三、四二三、八〇〇円であるのに、自己の所得である営業所の一部を吉田安太郎名義により神戸税務署に所得税確定申告をすると共に売上の一部を除外して架空名義予金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和四〇年三月三日自己の住居を所轄する名古屋中村税務署において、同務税署長に対し、その所得金額は九、九一七、九四三円にして、これに対する所得税額が三、九二五八五〇円である旨の所得税確定申告書を提出し、もつて前記の正規所得額と申告所得税額四、七〇八、九七〇円(この中には前記吉田安太郎名義で申告した所得税額を含む)との差額八、七一四、八〇〇円を免がれ

第二、昭和四〇年度における実際の総所得金額は、すくなくとも三五、六三二、〇〇〇円、これに対する正規の所得税額は一九、三〇八、八〇〇円であるのに、自己の所得である営業所得の一部を吉田安太郎名義により神戸税務署に所得税確定申告をすると共に売上の一部を除外して架空名義予金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和四一年三月一〇日前記中村税務署において、同署長に対し、その総所得金額は四、八七四、五三八円にして、これに対する所得税額一、四五五、七六〇円である旨の所得税確定申告書を提出し、もつて右正規所得税額と申告所得税額二、五一一、〇〇〇円(この中には右吉田安太郎名義で申告した所得税額を含む)との差額一六、七九七、八〇〇円を免がれ

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公廷における供述

一、検察官請求証拠目録記載の証拠と同じであるから、ここに、これを引用する。

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は昭和四〇年法律三三号所得税法付則二条、三五条、所得税法六九条に、判示第二の所為は所得税法二三八条に各該当するいずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑につき同法四七条本文、一〇条に則り判示第二の罪の刑に、罰金刑については同法四八条二項により併合罪を加重をした刑期及び罰金額範囲内において、被告人を懲役一〇月及び罰金六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときには、同法一八条一項により金一〇、〇〇〇円を一日に換算した期間労役場に留置する。同法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から右懲役刑につき三年間右刑の執行を猶予する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 松田四部)

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